ついのべ004

@min_kotoni で、たまに小咄をつぶやいています。

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DF3 レニスとラウラの暮らす家には、ふたりの育った家にも関わらず玩具らしい玩具がない。ほとんど唯一、チェスボードと駒があった。ラウラが小さい頃は駒が人形遊びのかわりに使われていた。 今は飾り棚に可愛らしい布を敷き、馬のかたちをした白い駒を飾って楽しんでいる。「騎士さま」だそうだ。 レニスとラウラは、時々チェスをする。決まってレニスは黒い駒、ラウラは白い駒で遊ぶ。ラウラのお気に入りの騎士さまは飾り棚を降りてチェス盤の上で大活躍する。 レニスは騎士さまが苦手だ。チェス盤の上だと騎士とは思えぬ奇怪な動きをして、レニスの黒い駒の数をあっという間に減らしていく。 今日も騎士さまは飾り棚に「いらっしゃる」。 昨日はなんとなくチェスを三戦もしたのに、レニスは三敗した。それが思い出されて、飾られている騎士さまを何となく睨みつける。 「騎士道精神なんてどこへやら、奇襲しか仕掛けないとんだ騎士さまだ」 それを聞いたラウラがすかさず反論する。 「お兄ちゃん、チェスっていうのは奇襲しあうゲームでしょう」 ちょっと、むくれられた。

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DF3

「お兄ちゃん!アーネスさんから、今日は狩りがうまくいったからおすそわけ、って貰ったんだけど、その…」アーネスからおすそわけを貰えるのはしばしばある。ラウラは何故か語尾を濁らせる。「うさぎかい、鳥かい?」「ううん……。……カバブー」「まさか一頭」「……うん」

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DF3

惰眠をむさぼりたいレニスは、無情にもラウラに布団をはがされ、そのまま手際よく外へ連れ出された。「起きて、神殿に集まる日よ」寝ぼけまなこのレニスには、なにもかも白っぽく光って見えた。前を歩くラウラも眩しい。「お兄ちゃん?」女神のように見えたと言うのは、さすがに照れくさかった。

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ジオコン2

チョップは、哥鞍の手元の紙が漢字で埋まっていくのを眺めていた。漢字はアルファベットより単語あたりに使われる字数が少なく、代わりにひとつひとつの文字は複雑、かと思えばシンプルな文字もあり、チョップを飽きさせない。

「ねえ弓は?弓は漢字でどう書くの?」

チョップは哥鞍の御守に漢字が書かれているのを見て、興味を覚えたのだった。あれこれ単語を挙げては哥鞍に漢字を書くようせがみ、様々な漢字が書かれるのをみて楽しんでいた。

哥鞍は様々な漢字を書かされ、文字と筆記具の文化について考えていた。エステロミアの筆記具は漢字を書くのに向かない。

慣れない筆記具で漢字を書くのに疲れてきた頃、チョップはいちばん書かせたかったであろうものをリクエストした。

「オイラは?チョップってどう書くの?」

表意文字である漢字で固有名詞を表現しようとすると、音をあてはめる他になくなる。しかしチョップの響きはそのまま漢字に変換できそうにない。

哥鞍はしばらく考えた後、紙の隅に小さく「手刀」と書いた。

チョップの好奇心は止まらない。

「じゃあ、ウマは?」馬と書こうとして止め、午と書いた。画数の少ないほうが女性らしくましだろうと思ったからだ。

「じゃあクロウは?」哥鞍はいよいよ面倒になり、苦労と書いた。「シュガーは?」佐藤と書いた。「ストローメアは?」今度は迷った。耳長と書いた。「ガノックスは?」迷わず髭と書いた。

「ありがとう!これみんなに見せてくるー!」

哥鞍は、あ、と言い掛けたがチョップは紙を持って部屋を走り出たあとだった。

哥鞍は傭兵たちが漢字を知らないことを願った。

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ハートランド

「カチュアは島を出ようと思わないの?」「あなたが来るときにここにいるわ」「この島はなくなっちゃうんだよ」「あなたが来るとき、この島はあるでしょう」僕がこの島を忘れ去ったとき、島は消える。僕はそれに気づくこともなく、二度と思い出すこともないのだろう。

後書き

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お題なし レニスたちが戦争へ行く前の話。ゲーム開始時より前のカダスの町を想像するのは意外と難しいです。

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お題なし 続かない。

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キラキラの朝 女神の子ラウラ。

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お題なし カグラさんの簡単な心情を書くのと、可愛らしさを表現する試み(むちゃな!) そもそもチョップがエステロミアの言語を読み書きできるのか怪しいですが…。 チョップは発音からおこすと著風とかになるのかな。 エステロミアの筆記具は、少なくとも毛筆ではなさそうですが、典型的ファンタジーの世界ですから羽ペンが無難ですかねー。作中で描写あったっけなあ。 御守りにも何かエピソードがあると面白いかしらと思い持たせてみましたが、今のところ何も考えていません。

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お題なし 僕はこの世で最後にハートランドを起動したユーザー。

2012.02.28 みん コトニエイ