「お兄ちゃん。」





「シュキ…シュキ。大丈夫か」
「うん。エストロミアの戦士さんが助けてくれた」
「そうか。…悪かった」

 どうして。どうして謝るの。
 大丈夫だよ。
 私は、大丈夫だよ。






「行くの、お兄ちゃん」
「ああ」

 お兄ちゃんは戦争に行きます。
 お礼をかねて、行きます。

「私が行く。だって助けてもらったのは私だから」
「俺はシュキを助けてもらった」

 お兄ちゃんは、一人前の僧侶です。
 私も勉強しているけれど、半人前だから行けません。

「じゃあ、私も一緒にいく」
「馬鹿を言うな」
「駄目なの」
「当たり前だ。お前には危険すぎる」

 どうして。戦争は危険なものじゃないの。
 お兄ちゃんには危なくないの。

「俺に何かあったら、王都の封書か使いが来るはずだ」

 何か、ってなに。
 何があるの。

 お兄ちゃんは、何も言わない。


「私も行く」
「まだ言っているのか」
「ぜったい、行く」
「わがままを言うな」
「でも、行く。お礼を伝えに行くの」

 ちょっと、だけ。

「礼を?」
「お礼言うのは私なのに、お兄ちゃんだけ行くのはへんだよ」
「そうだな」

「いいか、シュキ」
「なに、お兄ちゃん」
「挨拶が済んだらすぐ帰れ。わかったな」
「……わかった」




 王都へ向かう路。
 お兄ちゃんは、何も言わない。
 王都のずっと向こうの空を見ている。
 睨んでいるのかな。

 この先の橋が壊れていればいいのに。
 王都に僧侶がたくさんいたらいいのに。
 そうして、傭兵を断られちゃえばいいのに。


 …ねえ、お兄ちゃん。

「私、また魔物とか襲われたり、悪い人に連れて行かれたらどうしよう」
「俺が行く」
「来てくれるの」
「来る」

 少しだけの道のり。






兄妹愛。妹キャラにはどうにも萌え〜らしいです私。
シュキちゃんという名前はオリジナルです。漢字では『珠希』。
当たり前ですが、2のクロウのイメージです。
4のクロウって本当によくしゃべりますよね…。2と全然違う。
いつからそんなに口達者になったのクロウ…。