哥鞍・1
「ねぇ、ホロウィー?哥鞍ってどんなヤツなの?」
同じ魔法使いのストローメアがいきなり声をかけてきた。普段は「暗い」とかどうしようもない文句を言いたいだけ言ってくれるだけなのだが。
「え、どういうやつ、って…?」
「ほらほらあ、全身真っ黒で顔まで隠しちゃってるじゃない?クロウもそうだけど、あそこまで謎な傭兵はちょっといないでしょ。気になるじゃない?」
「だからって、なんで僕が…」
「だってあなた、哥鞍とよくパーティ組むでしょ」
組む、と言うより組まされる、と言った方がいいかもしれない。
パーティーがそれとなく決まってしまっていて、ホロウィーは哥鞍と組むことが多いのだ。属性だけ考えればチョップやシュガーでも良いはずだが、チョップは初期からの習慣でクレイドやレオナンデルとよく組むし、シュガーは魔法使いのラスターと仲がよいのでよくパーティを組んでいる。国王が、人間関係を考慮してパーティ編成をするためだ。しかし、ホロウィーにはあまり嬉しくない。気の弱く、自分の意見を言えない彼には、貧乏クジ──哥鞍とのパーティ編成がまわってくる。
「で、どんなヤツなの?」
「どんなヤツって…う〜ん、哥鞍は後方支援が上手だと思うな」
「そんなことはいいの」
そんなことって…じゃあ、どんなことを話せというんだ?
そう尋く前に、ストローメアはさっさと諦めたらしい。
「貴方に聞いたのが間違いだったみたいね。どうせ、貴方はパーティのリーダーとして指示を出してるだけで、話したことなんてあるわけないのよね。いいわ、哥鞍と同室のチョップにでも聴こうかしら〜〜…」
判っているなら最初からそうしてくれ、と叫びたい気持ちを抑えながら、気の弱い彼は、我の強い魔法使いの後ろ姿を眺めていた。
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